ブックイベントに行ってみた! トークイベント 橋本亮二×友田とん「繁茂する デスク周りを 闊歩する うもれる日々を 代わりに読む人」
こんにちは。本が好き!レビュアーのタカラ~ムこと佐野隆広です。 「ブックイベントに行ってみた!」第3回は、1月11日に神奈川県鎌倉市大船にあるポルベニールブックストアで開催された「橋本亮二さん&友田とんさん『繁茂する デスク周りを 闊歩する うもれる日々を 代わりに読む人』」です。出版レーベル「十七時退勤社」を主宰する橋本亮二さんと、「代わりに読む人」主宰の友田とんさんによる対談イベント。おふたりがお互いの活動について語り合うイベントとなりました。
「代わりに読む人」・友田とんさん(左)と「十七時退勤社」・橋本亮二さん(右)
トークイベント『橋本亮二×友田とん「繁茂する デスク周りを 闊歩する うもれる日々を 代わりに読む人」
日時 2020年1月11日(土) 19:00~20:40
会場 ポルベニールブックストア(神奈川県鎌倉市大船)
登壇者 橋本亮二さん(十七時退勤社)、友田とんさん(代わりに読む人)
http://bit.ly/35RpC8o
活動のはじまりは、文学フリマ
橋本さん、友田さんともに活動のはじまりは、文学フリマなのだそう。橋本さんが「十七時退勤社」を立ち上げて文学フリマに参加したのは、2019年の秋。きっかけは吉祥寺「BOOKSルーエ」の花本武さん(十七時退勤社・顧問)が文学フリマに出店していたのを知り、「面白そうだと思ったから」。花本さんから「文学フリマに出ればいいじゃない」と背中を押されて、十七時退勤社を立ち上げた顛末は、「うもれる日々」に詳しく書かれています。
『文学フリマ』は「文学作品の展示即売会」です。個人やサークル、出版社などさまざまな立場の人たちが出店できるイベントで、東京では5月と11月の年2回、その他北海道から九州の各地(2019年は札幌、岩手、金沢、前橋、京都、大阪、広島、福岡)で開催されています。2019年秋の文学フリマ東京には1100の出店者が参加し、総来場者は6000人超という巨大イベントです。
文学フリマ https://bunfree.net/
文学フリマ東京会場の様子(2019年春)
一方、友田さんは2018年の春、文学フリマ東京に初めて出店。Webで連載していた「『百年の孤独』を代わりに読む」を制作して販売しました。その後、2019年春に出版レーベル『代わりに読む人』を立ち上げ、「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する1」がレーベル刊行第1号になります。
橋本さん関連の書籍。中央やや右寄りの「うもれる日々」と「日日是製本」が十七時退勤社の本
友田さん関連の書籍。「『百年の孤独』を代わりに読む」と「パリのガイドブックで東京の町を闊歩する1」が代わりに読む人の本
出版レーベル活動は「とにかく楽しい」
十七時退勤社、代わりに読む人から出版されている本は、文学フリマだけではなく本屋さんでも販売されています。
橋本さんは、最初から本屋さんに卸して販売することを考えていたそうです。というのも、橋本さんの本業は出版営業。仕事で本屋さんを回った経験から、自分のレーベルの本が売れそうな本屋さんがわかっていたこと、本屋さん側からも問い合わせがあり、刊行前に発注をもらっていたといいます。「文学フリマを初売りの場にしたかったから、本屋さんでの販売は文学フリマ終了後で、とお願いしました」。
友田さんは、「『百年の孤独』を代わりに読む」を300部作成して文学フリマで80冊ほど販売。残った分をどうしようかというところから書店営業をスタート。
早稲田の「NENOi」、下北沢の「本屋B&B」に置かせてもらうところからはじまり、「置いてもらえると嬉しい」と思える本屋さんにアプローチを続けます。「地方も含めて半年で30店ほどの本屋さんを回りました。」全国を回ったときの様子は、友田さんのブログ「友田とんが勝手に歩く-『百年の孤独を代わりに読む』行商旅日記」で読むことができます。
「代わりに読む人」なのに本を読む時間がとれなくなってきている。今年は本を読むことを優先したい
おふたりとも出版レーベルの活動は「とにかく楽しいに尽きる」。仕事の休みを出版レーベルの活動にあてているので、休日がなくなったそうですが、本業への影響は特に感じないといいます。
活動を通じて、本屋さんに還元したい
営業としての顔と、出版者の顔を持つ橋本さん。「本屋さんに行くときの立ち位置は微妙です」
「自分たちの活動が本屋さんにとって利益になるようにしたい」という橋本さん。十七時退勤社では卸値を定価の60%に設定していて本屋さんには40%が利益として入ります。流通書籍の一般的な利益は20%くらいなので、十七時退勤社の本を1冊売れば文庫本を2冊売ったくらいの利益になります。「本屋さんが利益を得る仕組みは大事で、十七時退勤社のような活動が他にも出てくれば本屋さんにとってよいことではないかと考えている」という橋本さん。作って売るだけでなく、売り手が喜ぶところまで考えている点が印象に残りました。
今後の活動について
「十七時退勤社では年1冊新刊を出すことを目標にしています。秋の文学フリマで新刊を出す計画です。ラジオもやってみたい」。一方、友田さんは、「まず『パリのガイドブックで東京の町を闊歩する2』を出すこと。出版レーベルとして、自分の本以外の、読まれてほしい人の本を出したい。具体的には、現在、Web連載してもらっているわかしょ文庫さんの本を出したいと考えている」
お話を伺って、橋本さん、友田さんが互いの活動をリスペクトしていることが感じられました。十七時退勤社、代わりに読む人の今後の活動に期待大です。 橋本さん、友田さん、ポルベニールブックストアの金野さん、楽しいイベントの取材に応じていただき、ありがとうございました!
おふたりのおすすめ本
イベントでおふたりが紹介したおすすめ本をご紹介します。
友田とんさんのおすすめ本
書籍:『収容所のプルースト』
(ジョゼフ・チャプスキ, 岩津航(翻訳)/共和国)
書籍:『プルーストを読む生活 1』
(柿内正午/零貨店アカミミ)
*自費出版
橋本亮二さんのおすすめ本
書籍:『図書室』
(岸政彦 / 新潮社)
書籍:『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』
(ルシア・ベルリン,岸本佐知子(翻訳) / 講談社)
書籍:『夢も見ずに眠った。 』
(絲山秋子 / 河出書房新社)
ポルベニールブックストア https://www.porvenir-bookstore.com/
十七時退勤社ツイッター https://twitter.com/17leaving
代わりに読む人 https://www.kawariniyomuhito.com/index.html
「百年の孤独」を代わりに読む https://note.com/tomodaton/m/m796729426a3b
友田とんが勝手に歩く-『百年の孤独を代わりに読む』行商旅日記 https://note.com/tomodaton/m/ma47821173b58
わかしょ文庫「うろん紀行」 https://www.kawariniyomuhito.com/yomimono.html
プルーストを読む生活 https://note.com/amokgoodish/n/n80c4ba0e074c?magazine_key=m705be553e1e2
朝日出版社営業部(橋)のサケブログ/書店訪問日誌 http://blog.livedoor.jp/asahipress_sake/