2019年9月5日、ドイツ文学者の池内紀(いけうちおさむ)氏が亡くなられました。池内紀といえば、ゲーテ『ファウスト』の翻訳家、文学者として知られていますが、エッセイストとしても活躍されました。旅好き、山歩き、散歩、秘湯をめぐる温泉博士。池内氏の人間味あふれるエッセイをご紹介します。
文豪ゲーテのイメージが変わる!愛溢れる評伝エッセイ。
ゲーテさんこんばんは
書籍:『ゲーテさんこんばんは』
(池内紀 / 集英社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/39191/
『若きウェルテルの悩み』や『ファウスト』のゲーテ(読んだことないけど)の評伝的エッセイ。至言にあふれている。ゲーテ好きも、私のようなゲーテ素人も楽しめると思います。(allblue300さん)
文豪ゲーテなんていう堅苦しいイメージは、どうやら後世の人がつくりあげたイメージのようだ。作品と作者の人格は別物だ。面白いおっちゃんだった。(クロニスタさん)
無類の旅好き。気の向くままに世界をめぐる
マドンナの引っ越し
書籍:『マドンナの引っ越し』
(池内紀 / 晶文社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/137453/
イタリア、オランダ、台湾、チェコ……旅好きで旅慣れた著者ならではの22編の極上の旅物語!(かもめ通信さん)
基本的に出不精なので旅に出なくなって久しいのですが、ちょっとした親切、ささやかな大発見、そこにしか見つけられない風景などが、臨場感もって描かれているこんな本を読むと、ふらっと旅に出る以上に素晴らしいことはないのでは、と思えてくるから不思議です。(作楽さん)
自分のなじみの店をもつたのしみ
今夜もひとり居酒屋
書籍:『今夜もひとり居酒屋/』
(池内紀 / 中央公論新社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/186163/
初めての居酒屋での振る舞い方や、常連の定義など、これから独り居酒屋デビューを考えている方には参考になる部分が多いのでは。 しかし、居酒屋本を出す人たちってつまみの描写が上手い。 飲むときはほとんど食べない自分のような人間には書けないな、と感心することしきり。(ao-kingさん)
池内によると、お酒は酔いが頂点に達して、これから下りに入るときに呑む酒が一番美味しいとのことだ。しかし、今がそのときだということがわかるのが難しい。もう、終わりにしたほうがよい状態になっても、ぐだぐだ飲んでいる人やグループが多い。(はなとゆめ+猫の本棚さん)
温泉博士としての顔
湯けむり行脚 池内紀の温泉全書
書籍:『湯けむり行脚 池内紀の温泉全書』
(池内紀 / 山川出版社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/272702/
池内紀さんと言えばドイツ文学の重鎮です。なんか原書片手にヨーロッパを行脚したり、書斎でうずたかい原書に囲まれてパイプを吹かしてるこれぞインテリゲンチャみたいな生活をしているのが小生の池内紀さんのイメージでした。 そのイメージが瓦解するのが本書です。気取らない文章ながら下品にはならず、的確な温泉場の情景描写だけでなく、その地の歴史風土、神話からゆかりのある文学者の短歌、俳句、詩までまるで国文学者のような博識を披露してくれます。(ツンドクさん)
温泉の種類や、効能などは一応記されているが、温泉そのものよりも、そこに行き着く経路で目にしたものや耳にする言葉、人の仕種や表情、といった寄り道の方にこそ読むべきところがあると思う。(青玉楼主人さん)
山歩きが趣味。森で出会った生き物をイラストとともに綴る
森の紳士録―ぼくの出会った生き物たち
書籍:『森の紳士録―ぼくの出会った生き物たち』
(池内紀 /岩波書店)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/190446/
文章はゆったりとしています。素朴でやわらか。そして、気品を感じている。 著者が生きものたちとの出会いに心躍らせているのが伝わってくる。 紳士同志が、名刺を交換しあい、丁寧に挨拶をかわしているようにも感じます。 親しみを持って語るけれど、狎れなれしくはない。 相手の領域は犯さずの、微妙な距離感がいいな、と思います。(ぱせりさん)
エッセイストとしてもたくさんの著作を遺された池内紀さん。 教養のある人には世界はこう見えるのかぁ、とその思考を通して世界の美しさ、面白さを伝えてくれる作品群は読むたびに新鮮な驚きを与えてくれます。ご冥福をお祈りいたします。