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作家を読む 生誕100年 色褪せない個性 島尾ミホ おすすめ5選

作家・島尾敏雄の妻で、作家としても活動した、島尾ミホは1919年生まれ。生誕100年となる今年は短編集『祭り裏』の復刊や記念イベントの開催、梯久美子さんによる評伝『狂うひと「死の棘」の妻・島尾ミホ』(新潮社)が文庫化になるなど、注目を集めています。

 

2019年は島尾ミホ生誕100年

『死の棘』にまつわる謎と島尾夫婦の実像に迫った、渾身の評伝

書籍:狂うひと :「死の棘」の妻・島尾ミホ (新潮文庫)
(梯久美子 / 新潮社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/281494/  

梯さんがここまで追いたかった人というの、とてもよくわかる。エキセントリックで、不穏で、同時になんとも可愛い不思議な魅力ある人物。緻密なルポに圧倒された。(michakoさん)
狂う妻と記録する夫。そのいびつな関係から立ちのぼる狂気と愛の形。本書は、「死の棘」に描かれる精神を崩壊させていく妻・ミホを中心に、島尾敏雄とミホとの関係、「死の棘」に描かれた夫婦の姿とそれに関わってきた周囲の人々の証言などを積み上げた圧倒的なノンフィクションである。(タカラ~ムさん)

圧倒的、という言葉が共通するレビュー。著者の梯さんを引き付けた、島尾敏雄の『死の棘』のモデルとなった女性、島尾ミホとはいったいどんな人物だったのか? 彼女の著作からおすすめ本をご紹介します。

島尾ミホプロフィール
1919年10月24日、鹿児島県大島郡瀬戸内町加計呂麻島生まれ。加計呂麻島の国民学校に代用教員として在職していた戦時中、海軍震洋特別攻撃隊の隊長として駐屯した作家の島尾敏雄と出会う。敗戦後の46年、結婚。75年『海辺の生と死』で南日本文学賞、田村俊子賞を受賞。07年3月25日、脳内出血のため奄美市の自宅で死去。他の著作に『愛の棘』『海嘯』(幻戯書房刊)。(『祭り裏』より)

島尾ミホのおすすめ作品

故郷・奄美大島、加計呂麻島の暮らしを生命力あふれる文章で綴った一冊

書籍:海辺の生と死 (中公文庫)
(島尾ミホ / 中央公論新社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/253893/  

奄美大島に暮らした著者が、父、母の思い出、伝統的な儀式、島の暮らしと自然、島を訪れる人々の思い出などをみずみずしく描き出した短編集。~中略~取り挙げる場面のセンス、生き生きとした文章、今日の我々から見たら、実に豊かに思える色彩に生と死が語られる。洗骨の儀式や、赤穂義士祭で、子供たちが徹夜で遠足、ゲームをする行事も心に残った。終戦2日前の話である「特攻隊長のころ」は、鮮やかに迫るものがある。(Jun Shinoさん)

 

石牟礼道子との対談。ふたりの美しい日本語に魅了される

書籍:ヤポネシアの海辺から―対談
(島尾ミホ,石牟礼道子 / 弦書房)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/128468/  

 

運命的な出会いから恋へ。特攻隊長・島尾と交わした手紙を全文復刻

書籍:島尾敏雄・ミホ - 愛の往復書簡
(島尾敏雄,島尾ミホ / 中央公論新社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/249270/  

『死の棘』などで、島尾敏夫と妻、ミホについては何となく知っていました。 不倫をした夫と、それが原因で精神を病んでしまった妻。 妻を見捨てることができず、一緒に精神病棟に入院した夫と、 夫を許すこともできないが、離れることもできない妻。 というイメージを持っていましたが、その二人がどのように付き合って 結婚したのか、というのがよくわかるのが、この本です。(ねこやなぎさん)

 

島尾敏雄との関係をミホ目線で捉えたエッセイ

書籍:愛の棘: 島尾ミホエッセイ集
(島尾ミホ/ 幻戯書房)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/283576/  

内容紹介:戦が迫る島での恋、結婚と試煉、そして再び奄美へ―戦後日本文学史上もっとも激しく“愛”を深めた夫婦の、妻による回想。南島の言葉ゆたかに記憶を甦らせるエッセイ集。

 

作家・島尾ミホが遺した奄美を舞台にした未完の小説

書籍:海嘯 (銀河叢書)
(島尾ミホ / 幻戯書房)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/283575/  

内容紹介:ハンセン病の影が兆した時、少女はヤマトの青年と出逢った。南島の言葉、歌、自然を自在にとりいれ描く、美しく惨酷な海辺の生と死。日本文学史上稀有の小説がヤポネシアから甦る。『死の棘』のモデルとなった著者が遺した衝撃の未完長篇。

 

おわりに

『死の棘』があまりに有名な私小説であるため、読者の多くは、島尾ミホを“『死の棘』の妻のモデル”“狂気の人”、として認識するのだと思いますが、ミホ自身のエッセイや小説では、国語教師であった彼女の堪能な言葉遣いや、素直で穏やかな語り口が印象に残ります。
奄美大島という、独特の風習や言葉、自然とともに人が共生してきた文化的背景がミホのもつ個性であり、ひとりの男性への愛を貫いた情の強さは、時を経ても生々しく読者をひきつけ、その引力が衰えることはありません。
島尾敏雄という作家を夫に持ちながら、妻であるミホ自身も作家としての才を備えていた。強烈なふたつの個性は、南国に逞しく根付く、鮮やかな花のように、文学作品を鑑賞する、という域を超えて、生きることの喜び、苦しみを作家自身の体験を通じて読み手に伝えてくれます。

 

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