海外文学の歩き方 第八回日本翻訳大賞最終ノミネート作品を読もう!
ロシアによるウクライナ侵攻のニュースは、穏やかな日常がいつガラリと崩れ去りかねない恐怖を伝えています。同じ地平で本当に起きていることとはにわかに信じがたい、残虐な行動。市民の理解を超えたところで繰り広げられる戦争。世界への窓が大きく開かれているからこそ、その窓からは様々な価値観が飛び込んできます。
世界を知ることは、私たち自身の立ち位置を知ることでもあります。
前置きが長くなりましたが、今回で第八回を迎える日本翻訳大賞。
1年間に日本語に翻訳された出版物を対象に、読者がこれぞと思うものを投稿。一般公募で選ばれる本屋大賞といったところでしょうか。2次選考に残った作品は、選考委員による投票と討議を経て大賞が決定されます。
選考委員は、一線で活躍する翻訳者
ひとつの見どころなのが、選考委員のメンバー。岸本佐知子、斎藤真理子、柴田元幸、西崎憲、松永美穂(敬称略)と海外文学を嗜む読者であれば、誰もが知っている翻訳者たち。選考委員が翻訳した作品は、選考の対象外になるので、相当数が対象外になってしまう、という懸念はさておき、このメンバーでどんな討議が行われるのかも、興味津々です。
日本翻訳大賞公式ページ
https://besttranslationaward.wordpress.com/
最終選考ノミネート作品をチェック
最終ノミネートに残った5作品を、本好きが集まる書評コミュニティサイト「本が好き!」のレビューとともにご紹介します。読んでみないとその世界観が
海外文学作品。翻訳者の労力があってこそ日本語で堪能できる贅沢な本です。とはいえ、世界は広く、作品世界も幅広い。できれば選書に失敗したくない!
自分に合う、のぞいてみたい世界はどれか。選書の参考にしてみてください。
メキシコの女性作家ネッテルによる一気読み必須の短編集。
赤い魚の夫婦
書籍:『赤い魚の夫婦』
(グアダルーペ・ネッテル, 宇野和美(翻訳) / 現代書館)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/300907/
韓国文学をハングルで読んでみたくなる⁉ 詩情あふれる辞典
詩人キム・ソヨン 一文字の辞典
書籍:『詩人キム・ソヨン 一文字の辞典』
(キム・ソヨン, 姜信子(監修・翻訳), 一文字辞典翻訳委員会(翻訳) / クオン)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/301259/
ベトナム戦争に翻弄された人生。母に向けたベトナム系詩人による自叙伝的小説
地上で僕らはつかの間きらめく
書籍:『地上で僕らはつかの間きらめく』
(オーシャン・ヴオン, 木原善彦(翻訳) / 新潮社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/301047/
なぜそうしてまで逃げ続けるのか。読み手を面白いまでに翻弄するサスペンス
パッセンジャー
書籍:『パッセンジャー』
(リサ・ラッツ, 杉山直子(翻訳) / 小鳥遊書房)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/301133/
天涯孤独の女性タイピストの人生を通じて何を感じることができるのか。
星の時
書籍:『星の時』
(クラリッセ・リスペクトル, 福嶋伸洋(翻訳) / 河出書房新社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/296679/
アメリカ文学だけでなく、近年人気の高い韓国文学、ブラジル、メキシコなど、スペイン語圏からの作品も最終候補となっています。数多くの作品が翻訳されていくために読み手ができることは、読者となって翻訳出版文化に関わり、支えていくことが近道です。広い世界の文学作品から、読者の支持を集めた5タイトルを、ぜひ味わってみてください。