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【作家を読む】心地よくしみこむ言葉 歌人・作家 東直子 おすすめ5選

短歌とは、「万葉集」の時代にはすでに確立されていた、五七五七七形式の短い歌です。1300年を超える日本文学の歴史そのものともいえるほど、親しまれている短歌を、さらにぐっと身近にする短歌ムックが2018年に創刊され話題になっています。

書籍: 短歌ムック ねむらない樹 vol.1
(大森静佳,佐藤弓生,染野太朗.千葉聡,寺井 龍哉, 東直子(編集委員),田島安江(編集長)/ 書肆侃侃房)


『短歌ムック ねむらない樹』(現在、vol.3が発売中)の編集委員である、東直子さんは、歌人であり、作家、エッセイストでもあります。

「そら豆って」いいかけたままそのまんまさよならしたの さよならしたの(歌集『春原さんのリコーダー』より)

空よそらよわたしはじまる沸点に達するまでの淡い逡巡 (歌集『青卵』より)

 

11月に発売となった第二歌集の文庫化を機に、東直子ワールドを堪能できるおすすめ本をご紹介します。

東直子さんプロフィール
1963年、広島生まれ。歌人、小説家。絵本や童話、イラストレーションも手がける。歌壇、角川短歌賞選考委員。東京新聞歌壇選者。「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞、『いとも森の家』で第31回坪田譲治文学賞を受賞。歌集に『十階』、小説に『水銀灯が消えるまで』『とりつくしま』『さようなら窓』、エッセイ集に『短歌の不思議』、穂村弘との共著『回転ドアは、順番に』『しびれる短歌』がある。

 

この世に残した未練をモノとして見つめなおす連作短編集

書籍:とりつくしま
(東直子 / 筑摩書房)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/242159/  

この話は、亡くなってしまった人のもとへ、「とりつくしま係」がやって来て、なりたいモノになれるということを告げます。 ただし、とりつくモノはあくまでも「モノ」でなくてはなりません。 ほとんどの人が、大事な人の近くに居られるよう、身近なモノにとりつきます。 ある人は、妻の日記帳。またある人はリップクリーム。 全体的には愛する人のそばに居て、いつまでも見守っていたいという とても切ないストーリーが多く、ウルッとくるシーンが何度も押し寄せます。(Kuraraさん)
私が特に気に入ったのは野球のピッチャーが使う滑り止めにとりつく話。孤独なマウンド上の子供にもっとも近い場所で肌に触れたいという愛情と使われる度に空に舞い少しずつ消えていく切なさ。 それが悲しさよりもむしろ爽やかささえ漂うリズムにとても惹かれるものを感じました。(ramsさん)

 

糸島で少女が出会った豊かな自然と、老婦人。第31回坪田譲治文学賞受賞作。

書籍:いとの森の家
(東直子 / ポプラ社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/226929/  

日常のささいな喜びや楽しみって良いなあ。 そして「おハルさん」というおばあさんの存在が、ちょっとドラマチック。優しくて、ほのぼのしてるだけじゃないんです、苦労人おハルさん。~中略~文章がリズミカルで、とても読みやすかった小説でした。 九州弁が、よかったとよ~。(こまちさん)
銀行に勤める父の思いつきで、都会から田舎に引っ越してきた加奈子。田んぼに囲まれた通学路、家の近所にある森。 自然に囲まれた暮らしの中で、小学四年生の加奈子が命について考える。自然と生命の息吹の中で、瑞々しい少女の成長過程物語。 (chiezoさん)

 

今日マチ子さんのイラストの印象を見事に裏切る!? シリアスな青春小説

書籍:トマト・ケチャップ・ス
(東直子 / 講談社)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/192553/  

この作品は引用されている詩がいくつかあるんだけど、そこも私は゛どハマり゛。ストーリー中にこういうツボがあるのが嬉しかったです。~中略~物語は切ない青春ものに感じ、それぞれの家庭事情が織り込まれているのです。同世代の女性は何かしら自分の青春のページをめくり返すと思います。(えちごさん)

 

恋人たちの出会いから別れまでを、短歌で綴る往復書簡

書籍:回転ドアは、順番に
(穂村弘 東直子 / 筑摩書房)
レビューを読む:https://www.honzuki.jp/book/2963/  

NHKドラマで話題の、恋愛問答歌で綴られた男女の恋の物語。不思議なスリルと高揚感、そしてエロティシズム。短歌と詩でこれだけの世界が構築できるのは驚きです。(Yasuhiroさん)
ことばに対し息苦しさ、窮屈さを感じたとき、私は唐突に「詩」や「短歌」に惹かれます。少なくともそこだけは、私を無意識に縛り付けている重力から解放してくれるような気になるからです。 以下は私の特に好きな箇所です。 ☆は東さん、★は穂村さんの短歌です。
☆隕石で手をあたためていましたがこぼれてしまうこれはなんなの
★隕石のひかりまみれの手で抱けばきみはささやくこれはなんなの
「これはなんなの」―ぼろぼろこぼれてゆく何かに、そんなシンプルな表現で輪郭を与えられることばに私はまた魅せられるのです。(すずむし2号さん)

 

〈新刊情報〉第二歌集『青卵』が11月8日ちくま文庫より発売!

書籍:青卵
(東直子 / 筑摩書房)
レビューを書く:https://www.honzuki.jp/book/283336/  

 

最後に

東さんの小説作品には、俳句や詩、短歌がとても印象的に登場します。それらは読者の心に読後、じんわりと余韻を残します。
短歌や俳句は極限まで文字をそぎ落とした表現です。だからこそ、その中には読み手のこころが凝縮されています。また、詩歌とは「言葉を重ねても伝えにくいけれど、確かに感じている気持ちの揺れ」を表現するのに適した形式なのだと改めて感じます。
日本人が大切にしてきた、自然を愛で、人を恋するこころ。 31文字の言葉が生み出す、ふくよかな世界。
東直子さんの言葉の世界を表現するには、「心地よくしみこむ」というのがしっくりくるように感じます。 ぜひあなたの心にもしみこませてみてください。

 

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  1. 365bookdays編集部

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