今月の1位は泉鏡花が新聞連載した冒険小説『黒百合』
本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2021年6月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2021年6月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)
1位
書籍:『黒百合【Kindle】』
(泉鏡花/青空文庫)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:43
書評掲載日:2021-06-16 06:39:48
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/299197/review/262882/
キミはクロユリを見たことがあるか!?(注:ちょっと?自慢が入っています。)
泉鏡花のこの「黒百合」は、明治三十二年夏に「読売新聞」で連載された長編小説。 舞台は富山。 珍花奇草を愛好する知事令嬢の勇美子は、なんとしても黒百合を入手したいと思っていた。 (はて?黒百合とは?いったいどんな花なんだ?)という読者のために、鏡花は作中でこんな風に紹介してくれる。
~その黒百合というのは帯紫暗緑色で、そうさ、ごくごく濃い紫に緑が交った、まあ黒いといっても可いのだろう。花は夏咲く、丈一尺ばかり、梢の処へ莟を持つのは他の百合も違いはない。花弁は六つだ、蕊も六つあって、黄色い粉の袋が附着いてる。私が聞いたのはそれだけなんだ。西洋の書物には無いそうで、日本にも珍らしかろう。書いたものには、ただ北国の高山で、人跡の到らない処に在るというんだから、昔はまあ、仙人か神様ばかり眺めるものだと思った位だろうよ。…~…続きを読む
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2位
書籍:『妻を帽子とまちがえた男』
(オリヴァーサックス/早川書房)
レビュアー:三太郎さん 得票数:33
書評掲載日:2021-06-14 18:21:45
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/23859/review/262607/
人間の「知性」とは何なんだろうと考えさせられる、24の物語。
これは、1933年生まれで2015年に亡くなった脳神経学者、オリバー・サックス氏が1985年に出版した本の邦訳です。評判になった本らしくこのサイトでも多くの方がレビューしています。
全体は第一部が「喪失」、第二部が「過剰」、第三部が「移行」、そして第四部が「純真」と題されています。僕にとって印象的だったエピソードを紹介します。…続きを読む
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3位
書籍:『オオカミに冬なし―グリーンランドとアラスカとのあわい、ある不安な生活の物語』
(クルト・リュートゲン、K.J.ブリッシュ、中野重治/岩波書店)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:32
書評掲載日:2021-06-23 05:14:09
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/299180/review/262847/
容赦なく厳しい物語の底から、それでも立ち上がってくるのは
その年、アラスカの冬は早く来た。北極海で漁をしていた七隻の捕鯨船は、アラスカ北端のバロー岬で氷に閉じ込められてしまった。総勢275人の乗組員を助け出すために、大統領命令により政府のカッター「牡グマ」が向かう。けれども、氷に阻まれて、ベーリング海峡にすら辿りつけない。…続きを読む
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3位
書籍:『坤輿万国全図 その完全日本語訳』
(角谷賢二/銀河書籍)
レビュアー:休蔵さん 得票数:32
書評掲載日:2021-06-14 07:11:41
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/298761/review/262059/
関ケ原の翌年の世界地図。当時の日本とヨーロッパとでは見ていた世界が違っていたようです。そして、明とも。
1602年、明朝において1つの世界地図が製作された。「坤輿万国全図」である。イタリア人のイエズス会宣教師であるマテオ・リッチによるものである。この世界地図の特徴は、当初ヨーロッパ中心のものしか存在しなかった世界地図界にはじめて登場したアジア中心視点の地図という点にある。…続きを読む
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3位
書籍:『死の講義』
(橋爪大三郎/ダイヤモンド社)
レビュアー:darklyさん 得票数:32
書評掲載日:2021-06-14 21:17:16
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/299221/review/262926/
本書の副題は「死んだらどうなるかは自分で決めなさい」、それはどのように生きるのかと同じ問いである。
本書は「不思議なキリスト教」で有名な橋爪大三郎さんが死をテーマに書かれたものです。所謂スピリチュアルなものではなく、またキュブラー=ロスや立花隆のように医学あるいは科学的に死について迫ろうとしたものでもありません。いわば様々な宗教の死についての考え方を通じて、私たちは死をどのように捉えるべきなのか、そしてどのように生きるべきなのかという哲学に近い内容となっています。…続きを読む
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3位
書籍:『アホウドリからオキノタユウへ』
(長谷川博/新日本出版社)
レビュアー:紅い芥子粒さん 得票数:32
書評掲載日:2021-06-24 12:12:59
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/299337/review/263316/
海も、空も、陸も、人間だけのものじゃないんだよ……
吉村昭の「漂流」を読んだとき、わたしはアホウドリに深く深く同情したものだ。 かれらは、抵抗もせず、逃げもせず、漂流者に撲殺されて肉を提供し、大切な卵を奪われても報復もしなかった。漂流者は、かれらのおかげで生き延びることができたのだ。そんな神様のような鳥を、”アホウドリ”と侮蔑的な名前で呼ぶなんて。…続きを読む
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7位
書籍:『椿姫』
(デュマフィス/岩波書店)
レビュアー:ゆうちゃんさん 得票数:31
書評掲載日:2021-06-15 17:39:46
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/1183/review/262529/
娼婦を職業としながら純真な一面を持つ椿姫ことマルグリット、アルフレートと言う金持ちの息子が彼女に一目惚れし、ふたりで暮らしてゆこうと決心した。「マノン・レスコー」を意識した悲恋の物語
ヴェルディの歌劇「椿姫」の原作。著者のデュマ・フィスのフィスは息子と言う意味で「モンテクリスト伯」や「三銃士」で有名なアレクサンドル・デュマの息子である。 主人公はパリで有名とされる娼婦マルグリット・ゴーチエ。彼女には、亡くなった娘にそっくりだと言って金銭的な援助を惜しまない老公爵がいて、彼女を諭すのだが、彼女にはその効き目もなくパリでは派手な生活を送っていた。…続きを読む
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7位
書籍:『歌麿 抵抗の美人画』
(近藤史人/朝日新聞出版)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:31
書評掲載日:2021-06-07 22:24:02
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/190617/review/262699/
スポルディング・コレクションから読み解く絵師・歌麿の生涯
喜多川歌麿(1753-1806)といえば何といってもやはり美人画だろう。「びいどろを吹く娘」「寛政三美人」など、女たちの個性や心情まで写し取るような絵の数々は、江戸の人々にもてはやされ、一世を風靡した。
歌麿は蔦屋重三郎が見出し、幕府の度重なる弾圧を潜り抜けながら、美人画を描き続けたが、最後は手鎖50日の罰を受け、不遇のうちに亡くなったとされる。…続きを読む
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9位
書籍:『ミルクマン』
(アンナ・バーンズ、栩木玲子/河出書房新社)
レビュアー:hackerさん 得票数:30
書評掲載日:2021-06-23 18:58:36
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/295593/review/263293/
未知の作家の本を読む場合でも、期待や先入観を抱かないで読むことは、ほとんど不可能です。結果は期待通りの場合もありますし、良くも悪くも裏切られることもあります。本書の場合は、残念な結果だったようです。
先日読んだ、フェルナンド・アラムブルの『祖国』は、作者の出身地であり、長年スペインからの独立を求めてきたバスク地方を舞台に、そこでテロを含む武力闘争を続け、住民からも一定の支持を得てきたETA(バスク祖国と自由)の活動に巻き込まれた、普通の二家族を中心に据え、政治と理想とテロリズムと生活という一筋縄ではいかないテーマに、真正面から取り組んだ力作でした。もちろん、こんなテーマに明確な答えなど出せるわけはないのですが、…続きを読む
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9位
書籍:『さざなみの家』
(連城三紀彦/角川春樹事務所)
レビュアー:星落秋風五丈原さん 得票数:30
書評掲載日:2021-06-13 06:24:29
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/55130/review/262562/
あなたの家にも あるさざ波
「幸福な家庭はみな一様に似通っているが、不幸な家庭はどれもその不幸な顔は違っている。」と、かのトルストイは述べています。いえいえ、幸福な家庭にも、様々な事件は起こっているのですよ、トルストイ翁。そんな家庭の一つを、見て頂きましょう。…続きを読む
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9位
書籍:『もはや僕は人間じゃない (単行本)』
(爪切男/中央公論新社)
レビュアー:たけぞうさん 得票数:30
書評掲載日:2021-06-04 18:30:31
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/297209/review/261902/
怪人・爪切男の強烈な自虐エッセー。
題名が怪しげだし、「孤独から救い出してくれたのはパチンコ中毒のお坊さんと オカマバーの店員だった」という書誌情報も強烈だし、 「夫のちんぽが入らない」の著者のこだまさんを加えた四人で組んだ同人誌が 文学フリマで評判を呼び人気に火がついた人らしいしという、ごてごてのエピソードの持ち主です。 …続きを読む
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9位
書籍:『チビ医者の犯罪診療簿〈第1〉死体が空から降つてくる (1958年) (世界探偵小説全集)』
(ジョルジュシムノン/早川書房)
レビュアー:hackerさん 得票数:30
書評掲載日:2021-06-15 18:58:03
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/284410/review/262949/
シムノンが生み出した名探偵としては、メグレがあまりにも有名ですが、本書で活躍する素人探偵「ちび医者」は、メグレとは対照的な外見と生活スタイルではあるものの、肝心なところはやはり似ています。
ジョルジュ・シムノン(1903-1989)の生み出した名探偵として、メグレ警視はあまりにも有名ですが、シムノンは他にも何人か名探偵を生み出していて、田舎医者ジャン・ドーラン、通称「ちび医者」 Le Petit Docteur も、その一人です。…続きを読む
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9位
書籍:『ハシビロコウ』
(千葉市動物公園/東京書籍)
レビュアー:DBさん 得票数:30
書評掲載日:2021-06-11 20:03:39
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/289801/review/262756/
ハシビロコウの写真集
こないだニュースでハシビロコウのクラッタリングが銃撃の音に聞こえるというのをやっていて、そういえばどんな鳥なんだろうと本書を手に取ってみました。
初めてハシビロコウなるものに出会ったのは上野動物園。 なんの予備知識もなくケージを覗き込んだら不思議な物体が立っていた。 まったく動かないし、なにより見たこともないので置物かと思いつつじっと観察する。 その間微動だにしないハシビロコウだったが目の光でかろうじて本物の鳥だとわかった。…続きを読む
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