今月の1位は、究極のハードSFの裏に超壮大なロマンスを忍ばせた『三体3 死神永生』(早川書房)
本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2021年9月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2021年9月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)
1位
書籍:『三体3 死神永生 下』
(劉慈欣、大森望、ワンチャイ、光吉さくら、泊功/早川書房)
レビュアー:darklyさん 得票数:34
書評掲載日:2021-09-01 18:46:06
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/298657/review/266166/
もう何もかもが詰め込まれたある意味究極のコスパに優れた小説です。
上下巻まとめての書評となります。
三体文明との暗黒森林理論に基づく抑止、つまり宇宙は他の生命体を発見次第先制攻撃を行う文明に溢れているため、三体文明が地球を侵略しようとするならば三体文明の座標を宇宙に送信するという脅しにより平和が訪れた。しかし、三体文明は座標の送信を命じる権力者が交代するタイミングを狙っていた。新たな権力者程心はその決断ができないと三体文明は踏んでいたのだ。
三体文明の攻撃により地上の重力波送信装置は破壊され、地球は三体文明に支配されるかに思われたが、攻撃を免れた宇宙戦艦「万有引力」により全宇宙に向けて三体文明の座標を知らせる重力波が送信された。これにより三体文明及び送信元である地球への攻撃は不可避なものとなり、三体文明は地球移住を諦めざるを得ない状況となった。…続きを読む
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1位
書籍:『行く、行った、行ってしまった (エクス・リブリス)』
(ジェニー・エルペンベック、浅井晶子/白水社)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:34
書評掲載日:2021-09-22 06:45:35
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/299928/review/266818/
ああこれはまさに“打ちのめされるようなすごい本”だ。
原題は“Gehen, ging, gegangen.”
行く、行った、行ってしまった、ドイツ語不規則動詞の活用だ。
未来はこれからまだ何年も続くかもしれないし、ほんの数年しか続かないのかもしれない。いずれにせよ、大学を定年で退官した古典文献学の教授リヒャルトはもう、毎朝決まった時間に起きる必要はなく、ただ時間があるばかり。
「成功」は手に入れた。でもこれからは?旅行をする?本を読む?音楽を聴く?妻は既に他界し、子や孫はいない。かつては若い愛人もいたが、後味の悪い別れ方をしてから長い年月が経っていた。…続きを読む
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1位
書籍:『パリのアパルトマン』
(ギヨーム・ミュッソ/集英社)
レビュアー:yukoさん 得票数:34
書評掲載日:2021-09-21 20:51:30
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/285455/review/266993/
出会いから最悪な男女二人が、素敵なパリのアパルトマンを舞台に死んだ天才画家の遺作を探すことに。
傷心を癒すためにパリにやってきた元刑事のマデリン。一目惚れで借りたパリのアパルトマンは、管理している画廊の不手際でダブルブッキング。そのダブルブッキングの相手は、人嫌いでかなり変わり者の劇作家、ガスパールという男。どちらも絶対にこの素敵なアパルトマンを相手には譲らないと怒り心頭。不動産を貸し出した画廊の男に会いに行ったマデリンは、この素晴らしいアパルトマンが天才画家ショーン・ロレンツの持ち物であること、彼の遺品を管理していること、彼の遺作をさがしてくれないかという話を聞かされます。…続きを読む
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4位
書籍:『贖罪 (新潮文庫)』
(イアンマキューアン/新潮社)
レビュアー:紅い芥子粒さん 得票数:32
書評掲載日:2021-09-19 12:09:01
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/274006/review/266918/
少女のついた邪悪な嘘は、一人の若者とその恋人の人生を破壊した。
作家志望の夢見る少女ブライオニー。その事件が起きたのは、彼女が13歳の夏だった。広い屋敷のまっくらな森の中で、従姉のローズが何者かに凌辱されているところを、見てしまった。逃げていく人影の背格好から、ブライオニーは、ある若者の名を思いつく。…続きを読む
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4位
書籍:『妄想銀行』
(星新一/新潮社)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:32
書評掲載日:2021-09-05 08:10:59
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/23246/review/265914/
ショートショート32編。充実した作品集。
星新一のショートショートを読むのは、とっても久しぶりだ。舞台も情景も、登場人物たちの立場も、ほんとにさまざまな短い物語は、最後の一行二行で、あっと驚くようなひっくりかえりかたをする。びっくりのあとの余韻も、ほんとにさまざまで、思わずにんまりしてしまったり、ブラックな展開にぞーっとしたり、きつい皮肉にそわそわしたり、一方、よい夢をみたあとのような爽快感も味わえる。…続きを読む
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6位
書籍:『星を継ぐもの』
(ジェイムズ・P・ホーガン/東京創元社)
レビュアー:DBさん 得票数:31
書評掲載日:2021-09-19 21:09:39
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/10751/review/266919/
月と地球の壮大なSFの話
SF好きとしては有名な古典もぜひ読んでみなければと手に取りました。原子物理学者のハント博士はメタダイン社でアイデアマンとして研究をしていた。トライマグニスコープという技術と研究の結晶を実用化に乗せていたが、その絡みか理由もはっきりとはしないままロンドンからポートランドに呼び出される。…続きを読む
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6位
書籍:『京都発・庭の歴史』
(今江秀史/世界思想社)
レビュアー:休蔵さん 得票数:31
書評掲載日:2021-09-06 07:39:18
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/299946/review/264063/
庭園を観察する際の新たな視点を提供してくれる庭園史の概説書。はじめて触れる概念に目からウロコだった。
日本庭園の歴史について取り上げた本では、その様式を基軸に論を組み立てるあり方が主流である。たとえば、鑑賞式庭園、回遊式庭園など。
本書はそれを真っ向から覆し、異なる視点を与えてくれる。そのことだけでも読む価値があるというものだが、その視点は庭園のなんたるかを理解するうえで非常に重要なもののように思われた。…続きを読む
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6位
書籍:『もう切るわ』
(井上荒野/光文社)
レビュアー:ことなみさん 得票数:31
書評掲載日:2021-09-17 15:35:14
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/13911/review/266840/
書店にふらっと入って、井上荒野さんは読んでないな。と作家開拓で買って来た。「もう切るわ」。津村さんのようなお仕事小説かな。切るのは電話だきっと電話。題名で言いきるのは今度もスカッとするだろう。
車に戻ってやっと裏表紙を読む。「男と女の心の迷路を軽妙にえがく傑作小説」 え!しまった。井上荒野さんの背景をおぼろに知っていたのに。これは苦手分野だ。 と後悔しながら、ワンコインの投資で井上荒野さん研究ができるのだと気を取り直して帰り、読み始めた。好奇心は身を助ける。…続きを読む
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9位
書籍:『幻夏』
(太田愛/KADOKAWA)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:30
書評掲載日:2021-09-12 10:28:02
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/284313/review/266623/
あの遠い夏の日の思い出。
社会派ミステリ。
小さな興信所に、1人の女性から電話が来る。いなくなった息子を探してほしいというのだ。だが、息子がいなくなったのはなんと23年前だという。いくら警察や大手が手詰まりだからと言っても、そんな昔の事件を弱小の事務所が解決できるはずがない。所長の鑓水(やりみず)は断ろうとする。だが、女性が差し出した現金の多さに押されるように受けてしまう。
そして女性は忽然と姿を消す。…続きを読む
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9位
書籍:『村上海賊の娘(一)(新潮文庫)』
(和田竜/新潮社)
レビュアー:三毛ネコさん 得票数:30
書評掲載日:2021-09-04 13:32:52
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/288474/review/266273/
ベストセラーになった時代小説です。
時は戦国時代。織田信長が天下を統一しようとして戦をしている頃である。大坂本願寺と織田勢が対決していた。
雑賀党の鈴木孫一は大坂本願寺を捨てるように本願寺の門主、顕如に言うが、顕如は信長と戦うことに決めていた。そこで孫一が提案した戦略は、海から毛利家の協力で兵糧を運び込むというものだった。そして毛利家が頼る相手が、村上海賊。…続きを読む
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