今月の1位は、実の主人公はおじいさん!? 大人目線で読むと、子どものときには見えなかったもうひとつの物語の扉が開く『小公子』(岩波書店)
本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2020年8月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2020年8月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)
1位
書籍:『小公子』
(フランシス・ホジソン・バーネット/岩波書店)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:50
書評掲載日:2020-08-11 08:45:49
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/194125/review/249045/
実を言うと私、子どもの頃から彼のことをうさんくさい奴だと思っていたのだ。
幼い頃に父を亡くしたセドリックは愛情深い母と二人互いに寄り添いあいながらニューヨークで暮らしていたが一度も会ったことのない父方の祖父ドリンコート伯爵の求めに応じて
跡継ぎとしてイギリスに渡ることに。伯爵である祖父は周囲から高慢で頑固な孤独な老人だと評されていたがそんなこととは全く知らないセドリックは無邪気に祖父を尊敬し、伯爵のかたくなな心をほぐしていくのだった…。
実を言うと、私は、子どもの頃からこのフォントルロイ小公子となるセドリック少年が大の苦手だった。…続きを読む
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2位
書籍:『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』
(浅原ナオト、新井陽次郎/KADOKAWA)
レビュアー:darklyさん 得票数:40
書評掲載日:2020-08-10 10:01:29
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/290557/review/249154/
自分では偏見はあまりないと思っていたが無知であった。無知が偏見を生むのだからこの本を読んで良かったと思います。 #カドフェス
カドフェス制覇の終盤、残った作品の中から題名からして最も読まなさそうな作品を読もうと思いまして本書を手に取りました。結論的には読んでよかったと思います。小説自体はまあ普通の青春恋愛小説でありますが知らなかったゲイの文化などが盛り込まれており私には啓蒙小説として有意義な読書体験でした。…続きを読む
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3位
書籍:『透明人間』
(H.G.ウエルズ/岩波書店)
レビュアー:ことなみさん 得票数:38
書評掲載日:2020-08-20 22:21:55
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/128423/review/249643/
夏向きというより長い間不要不急の外出を控えているこの頃、あらぬ世界に浸れるという、妄想気味の読書がちょっとした支えになっている。
こんな時透明人間っていいかもと思ったら、読んでいくにつれて、彼は極寒の不幸をしょいこんだようでうすら寒く涼しくなってきた。
子供の頃、透明人間ってどうしたらなれるの、とたまに考えたことがある。なんだかとても都合がいい面白いことができるではないか。こっそりとあれもこれも。ところが読んでびっくり。…続きを読む
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4位
書籍:『ヒグマ大全』
(門崎允昭/北海道新聞社)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:37
書評掲載日:2020-08-17 09:17:22
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/291303/review/249485/
北国の雄とヒトは果たして共存できるのか
著者は北海道野生動物研究所所長を務めるヒグマ研究者。
本書は、半世紀にも渡るヒグマ研究の成果をまとめたものである。
その身体的特徴や生態、生活環、ヒグマを取り巻く環境に加え、ヒグマによる人身事故の詳細から、人間との共存に重要な事柄は何かを探る。さらに特徴的なのは、アイヌ民族とヒグマの関わりに1章を割いている点だ。アイヌのヒグマ観やヒグマ猟、そして「イヨマンテ」と称されるクマ送り儀礼についても詳述される。…続きを読む
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4位
書籍:『コレラの時代の愛』
(ガブリエル・ガルシア=マルケス/新潮社)
レビュアー:紅い芥子粒さん 得票数:37
書評掲載日:2020-08-12 10:54:52
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/14/review/249261/
53年の歳月を経て結ばれた二人。マグダレーナ川を上り下る船旅に出る。疫病患者を乗せた印の黄色い旗を翻し。それは、老いて耄碌した男女の、陽気で狂気の、命の終わりまで続くハネムーン。
舞台は南米コロンビア。19世紀末から20世紀はじめにかけて、世紀をまたいで生きた男女の愛の物語である。
劇的な場面設定はなく、平板な記述で物語が展開されていく。文章はウィットに富み、随所にキラリと光る警句が散りばめられている。…続きを読む
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6位
書籍:『停電の夜に』
(ジュンパラヒリ/新潮社)
レビュアー:三太郎さん 得票数:36
書評掲載日:2020-08-11 13:08:38
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/1607/review/249107/
停電の夜になにが起こったか。
このタイトルを見た瞬間に、「大停電の夜に」という東京が舞台の日本映画を思い出した。この映画は天災によって東京が大停電を起こす話で(後の3.11以後の大停電を予言したようだったが)停電により何組かのカップルの未来が変わっていく。
この本のタイトルになった短編小説の停電は工事のための計画的な停電だから、状況としてはむしろピョン・ヘヨンの短編「モンスーン」によく似ている。若いカップルの物語で少し前に子供を亡くしているところまで似ている。でもこちらの物語の方がずいぶんあっさりしていて、アメリカの小説っぽい。…続きを読む
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7位
書籍:『思いわずらうことなく愉しく生きよ』
(江國香織/光文社)
レビュアー:Yasuhiroさん 得票数:34
書評掲載日:2020-08-19 08:19:33
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/14016/review/249113/
三姉妹の日常と少しばかりの波乱を淡々と描いて終わってしまう、江國香織が好きか嫌いかではっきりと評価の分かれる作品。私は彼女の文章を読めるだけで幸せです。
久しぶりの江國香織です。彼女は一見何気ないようでいて実は天才的な文章を書く、と個人的に思っています。それはもう中毒になる程で、私の場合プロットどうこうより彼女の文章が読めるだけでいい。そこへ持ってきて静かな狂気を描くのが上手いときている。鬼に金棒です。…続きを読む
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8位
書籍:『復活の日』
(小松左京/KADOKAWA)
レビュアー:三毛ネコさん 得票数:33
書評掲載日:2020-08-02 10:48:00
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/268770/review/248721/
読む前はちょっと怖かったのですが、読了してみると、小松左京さんのメッセージが強く残りました。コロナ禍の今だからこそ、読んでもらいたい本です。
謎の病原菌が世界に蔓延する内容だと知り、コロナ禍の中にある自分に対する警告の書になるかと思い、読んでみることにした。
物語は1960年代から始まる。カールスキイ教授と呼ばれる人物が、あるモノを怪しげな男たちに渡す。それはMM88と呼ばれる菌である。受け取った男たちは、レーダーに引っかからない木製機でMM88をヨーロッパに運ぼうとする。…続きを読む
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8位
書籍:『砂漠が街に入りこんだ日』
(グカ・ハン、原正人/リトル・モア)
レビュアー:休蔵さん 得票数:33
書評掲載日:2020-08-24 09:22:43
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/290362/review/249561/
韓国出身の作家がフランス語で著した本書から、「移動」には様々な物語が内包されること、そして「移動」に多角的な意味合いを込められることを感じることができた。
本書は移動の小説という。8編からなる短編集であるが、主人公は必ずしも共通しない。本書は「私」の語りで、私からみた「あなた」に注目することもある。それでも視線は「私」による。
その「私」はどうやら別々の私のようで、「雪」の主人公である「私」はウエイトレスをしていて、「一度」の主人公である「私」の車窓の窓に映る姿は「ぼうっと座るひとりの男」。…続きを読む
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8位
書籍:『きみの友だち』
(重松清/新潮社)
レビュアー:Wings to flyさん 得票数:33
書評掲載日:2020-08-09 11:15:54
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/5802/review/249096/
もう思春期を通り越した大人の「君」も、人間関係に疲れたらこの本を開いてみて欲しい。
「本当の友だちとはどういう人だろう?」という問いかけが散りばめられた連作短編集である。小学生から高校生までの様々な友だち関係が描かれる。小学生の恵美ちゃんと由香ちゃんを中心に、登場人物が少しずつ重なり、彼らの成長を追いながら物語は進んでゆく。時には非常に残酷な思春期の情景が、優しく温かいで眼差しで描かれ、登場する子どもたちの感情が胸に染み入ってくる。…続きを読む
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