今月の1位は、短い物語の筈なのに。作家と訳者の巧みな技が冴え渡る作品集『その昔、N市では』(東京創元社)
本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2023年4月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2023年4月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)
1位
書籍:『その昔、N市では』
(マリー・ルイーゼ・カシュニッツ、酒寄進一/東京創元社)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:38
書評掲載日:2023-04-05 05:23:49
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/311226/review/289403/
200頁ちょっとと比較的薄めの本にもかかわらず、いずれ劣らぬ読み応えの作品が15篇も!!
戦後ドイツを代表する女性作家マリー・ルイーゼ・カシュニッツ(1901-1974)の作品を集めた日本オリジナル短篇集。
200頁ちょっとと比較的薄めの本にもかかわらず、いずれ劣らぬ読み応えの作品が15篇も入っている。
怪奇あり、幻想あり、狂気あり、不条理あり……と、いずれも確かに“奇妙な味”ではあるが、日々の営みの中に知らず知らずのうちに生じはじめる歪みの描き方が絶妙。 どれもこれもありえないはずなのに、真理を突いている気がして、なんだか胸の内を見透かされたようなゾクゾク感も。…続きを読む
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2位
書籍:『ヒトは人のはじまり』
(三谷雅純/毎日新聞社)
レビュアー:休蔵さん 得票数:36
書評掲載日:2023-04-17 20:32:45
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/315805/review/289541/
霊長類の進化史の概説書と思って読み始めけれど、もっと深いテーマがある。種の進化、そして存続において、いかに多様性が大切であるか。現代社会についても考えさせられた1冊。
本書の筆者は霊長類学者としてアフリカやインドネシアなどでフィールドワークを重ねてきた。
現地入りし、詳細に霊長類の観察をして研究を深めていく。
様々な環境で霊長類の調査を推進するためには現地で暮らす人びとの協力や彼らとの交流が欠かせず、その過程で様々な環境で生活する「ヒト」の観察も同時に行うことになったようだ。…続きを読む
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3位
書籍:『メキシカン・ゴシック』
(シルヴィアモレノ=ガルシア、青木純子/早川書房)
レビュアー:darklyさん 得票数:34
書評掲載日:2023-04-12 19:53:23
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/306095/review/289878/
純粋なホラー小説であるが、カメレオンのようにその印象が変化していく。映画化されそうな雰囲気の作品。
女子大生のノエミは父親の依頼により従姉カテリーナが住む寂れた屋敷を訪れる。カテリーナはそこに住むイギリス人と結婚したのだが、カテリーナから錯乱したような手紙がノエミの父親に届きそれを心配した父親が様子を見に行って欲しいと。…続きを読む
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3位
書籍:『峠越え』
(伊東潤/講談社)
レビュアー:休蔵さん 得票数:34
書評掲載日:2023-04-03 07:12:28
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/216334/review/288977/
2023年のNHK大河ドラマ「どうする家康」のおかげで、徳川家康に関連する本が数多く出版され、特集されている。その流れで手にした本書は、本能寺の変後の家康の逃避行を主眼を置いた小説。予想以上の面白さ。
2023年のNHK大河ドラマは「どうする家康」。ただでさえ賛否ある大河ドラマで、なかなか厳しい意見もちらほら聞こえてくるのは私の周辺だけの話だろうか。
それはともかく、徳川家康に関連する本が数多く出版されるタイミングではあるので、それはそれで良しと思いたい。…続きを読む
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5位
書籍:『注文の多い注文書 (単行本)』
(小川洋子、クラフトエヴィング商會/筑摩書房)
レビュアー:紅い芥子粒さん 得票数:33
書評掲載日:2023-04-04 08:21:53
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/214094/review/289551/
この世にないもの、あります。
<クラフト・エヴィング商會>は、東京の片隅の、引き出しの奥のような、路地が入り組んだところにあります。
その看板の謳い文句は、「ないもの、あります」。
創業は明治で、「舶来の品および古今東西より仕入れたふしぎの品の販売」をしてくれるお店なのです。…続きを読む
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6位
書籍:『ミッドナイト・ライブラリー (邦訳版:The Midnight Library)』
(マットヘイグ、浅倉卓弥/ハーパーコリンズ・ジャパン)
レビュアー:yukoさん 得票数:32
書評掲載日:2023-04-17 11:15:38
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/304845/review/290042/
「あの時別の選択をしていれば」と思って生きていくよりも、今の人生に感謝していればおのずと素晴らしい人生になるはずです
物語はノーラが死を決意する19年前の学校の図書室からからはじまります。優しい司書のエルム夫人とチェスをしていたノーラ。そこに父が心臓発作で倒れた知らせがきます・・・…続きを読む
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6位
書籍:『われら闇より天を見る』
(クリスウィタカー、agoera、鈴木恵/早川書房)
レビュアー:茜さん 得票数:32
書評掲載日:2023-04-03 00:15:32
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/311890/review/289498/
人生の闇の中に差す一条の光を描いた英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作。
読み終えて、凄く力が沸いてくるのと爽快な感じに包まれます。それは多分、何度も何度も地獄に落とされたからかも知れない。最悪なシーンから始まり、その後に登場するヒロインの言葉が良い。
「あたしは無法者のダッチェス・デイ・ラドリー、おまえは臆病者のネイト・ドーマンだ」…続きを読む
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6位
書籍:『戦争は女の顔をしていない』
(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/岩波書店)
レビュアー:ゆうちゃんさん 得票数:32
書評掲載日:2023-04-16 12:08:27
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/235832/review/289980/
第二次世界大戦の独ソ戦で前線に出た女性を中心に500名の証言を集めた本。重たい内容ではあるが出版に意義がある本でもある。
ずっと以前から読みたかった本だった。著者は2015年にノーベル文学賞を受賞している。
本書は1978年から2004年の間、500人を超える女性のインタビューをまとめたものである。インタビューの間に著者の感想が入るが、所々に戸惑いも感じられる。…続きを読む
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6位
書籍:『ある男』
(平野啓一郎/文藝春秋)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:32
書評掲載日:2023-04-10 08:40:53
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/269810/review/289343/
人の存在とは何か。人が人を愛するとき、「何」を愛しているのか。
映画化もされた話題作。>
弁護士、城戸は、かつて離婚の相談にのった依頼者・里枝から、奇妙な相談を受ける。 不運な女性だった。数年前に幼い次男を病気で亡くし、それが元で夫と不仲となり離婚。故郷に戻ったが、まもなく実父が死亡。縁あって別の男性と結婚したが、今度はその男性が職場の事故で急死した。…続きを読む
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10位
書籍:『ベル・ジャー (Modern&Classic)』
(シルヴィア・プラス/河出書房新社)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:31
書評掲載日:2023-04-05 08:16:39
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/146902/review/288293/
物語のなかでエスターは独白する。自分の上におりてきたのは「すべてのものを歪んで見せるあの息苦しいベル・ジャー」であると
作者シルヴィア・プラスは、1932年生まれ。十七歳にしてすでに短編小説や詩で数々の賞を受賞。名門女子大学スミス・カレッジに在学中、『マドモアゼル』誌のゲスト・エディターに選ばれてニューヨークに一カ月間招待される。けれども帰宅後、自殺未遂で、精神病院で療養することになる………続きを読む
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10位
書籍:『日本人の英語』
(マークピーターセン/岩波書店)
レビュアー:三太郎さん 得票数:31
書評掲載日:2023-04-03 07:55:38
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/73049/review/289430/
米国人の著者が35年前に日本語で書いた、日本人のための英語入門。
米国人の著者が35年前に日本語で書いた、日本人のための英語入門だ。
僕も30年ほど前に一度読んでいて、特に冒頭の冠詞についての記述はよく覚えている。この本のおかげで英文の論文を読むのが少し楽になった。今回再読してみて、英語ネイティブの人の言葉の感覚を理解するのはやっぱり難しいなあ、と思った。…続きを読む
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10位
書籍:『宇宙からきたかんづめ』
(佐藤さとる/ゴブリン書房)
レビュアー:ときのきさん 得票数:31
書評掲載日:2023-04-06 22:10:01
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/187702/review/289111/
かんづめが宇宙のふしぎを語る
イタリアの文学者、イタロ・カルヴィーノには『レ・コスミコミケ』という短編集があって、これはQfwfqという発音不可能な名前を持つ老人が、宇宙の始まりや生命の起源について「わしはちょうどそこにいた」と語りだし壮大なほら話を披露する連作だ。…続きを読む
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