今月の1位は、敏腕編集者が語る、読書のもたらす効用『読書という荒野』(幻冬舎)
本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2022年5月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2022年5月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)
1位
書籍:『読書という荒野』
(見城徹/幻冬舎)
レビュアー:yukoさん 得票数:35
書評掲載日:2022-05-08 21:54:15
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/266463/review/275951/
本がない人生なんて、生きる意味がない!
幻冬舎を作った見城徹。私にとっては10代20代にのめり込んだ村上龍を売り出した人、という認識。熱く読書について語る中、本を読まない経営者は信用できないなどとばっさり。
石原慎太郎への熱烈なラブコールなんかは、いかにも時代がそういう時代だったんだろうなと思いますが、仕事への情熱はすごいなと素直に関心。自己検証、自己嫌悪、自己否定をしなければ、人間は進歩しない、そのためにひたすらを読め。ひたすらに本を読みこんできた人に言われると納得かなと。…続きを読む
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2位
書籍:『邪馬台国と黄泉の森: 醍醐真司の博覧推理ファイル』
(長崎尚志/新潮社)
レビュアー:darklyさん 得票数:34
書評掲載日:2022-05-04 19:42:34
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/264720/review/275791/
MASTERキートン原作者による醍醐真司シリーズ第二弾。ミステリの形を取りながらも物語に通底する漫画哲学とも言える蘊蓄が楽しい。
本短編集は副題にある通り、醍醐真司という漫画編集者を主人公とするミステリです。と言いましてもかなり変わった構成となっています。4つの短編が収められていますが、「消えた漫画家」と「闇の少年」は基本的に同じ事件を題材にしたミステリであり、「邪馬台国の女帝」と「天国か地獄か」は独立したものです。…続きを読む
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2位
書籍:『昆虫記』
(遠藤勁、今森光彦/福音館書店)
レビュアー:休蔵さん 得票数:34
書評掲載日:2022-05-09 07:23:12
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/102856/review/271656/
虫が苦手な人も多いだろう。ノートの表紙に異議が申し立てられるような状況だ。虫が苦手という気持ちは尊重されている。ただ、好きな人も多い。本書は虫への愛に溢れた1冊である。
子どもの頃、昆虫が好きだった人は多いはず。でも、大人になるにつれて、子どもの頃のような昆虫愛は薄れていきがち。場合によっては、虫が怖くなってしまうことだってある。本書は写真家今村光彦が手がけた「昆虫記」。…続きを読む
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2位
書籍:『鳥は飛ぶのが楽しいか』
(チャン・ガンミョン、吉良佳奈江/堀之内出版)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:34
書評掲載日:2022-05-25 05:49:39
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/305443/review/276380/
これまたスゴイ本を読んでしまった。
生きづらさを感じて、母国を出て行こうとするた若い女性の葛藤を描いた『韓国が嫌いで』。朝鮮半島を舞台にした近未来ディストピア小説『我らが願いは戦争』。
全く違うテイストながら、あれやこれやを抱え込んだ人々の描き方が絶妙で、読み手に忘れがたい印象を残すチャン・ガンミョンの、今度の本は“労働小説”なのだという。…続きを読む
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5位
書籍:『智恵子飛ぶ』
(津村節子/講談社)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:31
書評掲載日:2022-05-14 06:24:41
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/192171/review/275382/
「智恵子抄」ではない智恵子に会いに行こう
『智恵子抄』の外の長沼(高村)智恵子。あなたはどんな人だったのだろう……。親を説き伏せて福島から東京の女子大学校への進学を果たし、絵で身を立てていこうとしていた。帯のお太鼓に油絵で描いたという百合の花は、きっと、誰の真似でもない自分の道を探そうとする人の凛とした美しさに輝いていたことだろう。
光太郎に出会う。思う。一途な恋が実ったときには、とても嬉しかった。時がすぎても色あせることなく続く相手への深い思いは、ほんとうに一途で美しくて、そのせいで、幸せそう、よりも、苦しそうだった。…続きを読む
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6位
書籍:『少女が見た1945年のベルリン ――ナチス政権崩壊から敗戦、そして復興へ』
(クラウス・コルドン、ゲルリンデ・アルトホフ、クリストフ・ホイヤー、鵜田良江/パンローリング)
レビュアー:Ninaさん 得票数:29
書評掲載日:2022-05-06 09:29:22
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/305689/review/274434/
住む場所や食べる物の心配をしなくてすみ、 安心して毎日温かいところで暮らせる生活。 決して当たり前ではないこの暮らしは 幸せなことなんだなと改めて思い知らされた。
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なにも見ようとしない者には、
なにも見えない。
なんのにおいも感じようとしない者には、
なにも感じられない。
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本著は、クラウス・コルドンのベルリン三部作の1つ『ベルリン1945』をグラフィックノベルにしたもの。『ベルリン1919』で主人公だったヘレの娘、エネが主役。…続きを読む
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7位
書籍:『ロシアトヨタ戦記 (単行本)』
(西谷公明/中央公論新社)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:28
書評掲載日:2022-05-09 08:30:04
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/307342/review/275967/
ロシアでのトヨタ立ち上げ奮戦記
2004年の通称ロシアトヨタの立ち上げに奔走した社長の奮戦記である。著者はもともと長銀総研にいた人物で、在ウクライナ大使館付き専門調査員として勤めていた。長銀が破綻したことから帰る先がなくなったところで、トヨタから声を掛けられたのだった。 当時会長であった奥田碩の肝煎りで、トヨタはロシア進出を目論んでいた。ロシア通の人材として著者に白羽の矢が立ったのである。…続きを読む
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7位
書籍:『河童』
(芥川竜之介/)
レビュアー:紅い芥子粒さん 得票数:28
書評掲載日:2022-05-26 15:36:46
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/220602/review/276685/
滑稽を装ってはいるが、心身が衰弱していた作者の、心のうめきが聞こえてくるような短編である。
昭和二年三月「改造」に発表された作品である。芥川龍之介は、昭和二年七月二十四日に致死量の睡眠薬を飲んで自死している。「河童」を書いていた時は、すでに心身が衰弱していたのだろう。滑稽を装ってはいるが、作者の心のうめきが聞こえてくるような短編である。…続きを読む
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9位
書籍:『火車』
(宮部みゆき/新潮社)
レビュアー:くにたちきちさん 得票数:27
書評掲載日:2022-05-09 06:55:34
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/13639/review/272229/
30年前に出版され、文庫本になってから、87版を重ねた「ベストオブベスト(国内編)」をふとしたきっかけで手にしました。久しぶりに読んだ長編小説の面白さはどこにあるのか、コロナ禍時代の副産物です。
つれあいにつきあって、FM東京の「メロディアス・ライブラリー」を2回にわたって聞いたのが、きっかけで、この本を読みました。東京生まれの筆者らしい日常生活の描写とはうらはらに、深刻な事件を追跡し、遂に解決できたと思いのほか、真犯人は、結局分からずじまいになる結末まで、面白く読みました。…続きを読む
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10位
書籍:『スモールワールズ』
(一穂ミチ/Array)
レビュアー:たけぞうさん 得票数:26
書評掲載日:2022-05-12 19:05:11
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/298360/review/275832/
家族という小さな世界の出来事。
直木賞候補と本屋大賞候補になったことがきっかけで手に取りました。スモールワールズとは、いろいろな形の家族の世界を描いたという意味でした。
六篇の短篇集です。発想のきっかけを探るような、ちょっと変わった設定を持ち込んでいる作品が目につきます。もちろん、不倫や両親のいない子、DVを受けた子どもなどの設定もあります。…続きを読む
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10位
書籍:『世界は「e」でできている オイラーが見出した神出鬼没の超越数』
(金重明/講談社)
レビュアー:三太郎さん 得票数:26
書評掲載日:2022-05-15 00:27:33
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/307556/review/276142/
昨年の12月に出たばかりのブルーバックスです。ネイピア数(e)の謎を解き明かします。
先日、円周率πに関する本を読んでいて、超越数という聞きなれない言葉にであった。超越数とはどんな代数的方程式の解にも決してならないという、ちょっと気難しそうな数で、ネイピア数と円周率はその代表格だという。…続きを読む
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10位
書籍:『夢見る帝国図書館』
(中島京子/文藝春秋)
レビュアー:morimoriさん 得票数:26
書評掲載日:2022-05-20 15:36:41
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/307657/review/276299/
「図書館が主人公の小説」を書いてと持ちかけてきた喜和子さん。上野公園のベンチで知り合った喜和子さんと作家のわたし、そして日本初の国立図書館の物語。
2019年に初めて「夢見る帝国図書館」を読んだ時、文庫本が出たら購入し保存しようと思っていた。やっと5月10日に書店に並び再読したが、ずいぶんと内容を忘れていた。あるいは、ザックリ読んで読んだ気になっていたのかもしれない。…続きを読む
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10位
書籍:『蝶々と戦車・何を見ても何かを思いだす―ヘミングウェイ全短編〈3〉』
(アーネストヘミングウェイ/新潮社)
レビュアー:千世さん 得票数:26
書評掲載日:2022-05-03 17:51:23
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/256061/review/275751/
『ヘミングウェイ全短編』の最後の作品集です。自ら従軍記者として取材し、身近に体験したスペイン内戦と第二次世界大戦を描いたものが多く、今まで以上に「死」、それも「突然の死」をダイレクトに伝えます。
全3冊からなる『ヘミングウェイ全短編』の最後の作品集です。スペイン内戦に従軍してからのヘミングウェイ晩年の作品集であり、生前未発表の7遍も含まれています。
自らが取材し、体験したスペイン内戦と第二次世界大戦のヨーロッパ戦線を描いた作品が多く、今までの短編集以上に「死」がダイレクトに伝わります。…続きを読む
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10位
書籍:『すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集』
(ルシアベルリン、岸本佐知子/講談社)
レビュアー:hackerさん 得票数:26
書評掲載日:2022-05-10 17:32:24
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/305828/review/275924/
「死について、ひとつ確かなことがある。その人が”良い”人で、優しく親身で気のいい人であればあるほど、その人の死が残す傷も小さい」(本書収録『緊急救命室ノート、1977年』より)
「ルシア・ベルリンの小説は、ほぼすべてが彼女の実生活に材をとっている」
これは、同じ訳者によるルシア・ベルリン(1936-2004)の日本初出版となった『掃除婦のための手引書』の訳者あとがきで述べられている文です。『掃除婦のための手引書』は、2015年に刊行された作品集から24作を収録したものでしたが、ここ数年の間に読んだ一人の作家の短篇集としては屈指のものでした。…続きを読む
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10位
書籍:『JR上野駅公園口』
(柳美里/河出書房新社)
レビュアー:rodolfo1さん 得票数:26
書評掲載日:2022-05-25 10:39:41
書評URL:https://www.honzuki.jp/book/270441/review/276624/
上野公園には東北出身のホームレスが集まっていた。家族の為に30年以上出稼ぎを続けた男は、長男を先に亡くし、その後妻にも死別し、故郷を出て東京に出奔した。5年に及ぶホームレス生活の後に男が悟ったものは
柳美里作「JR上野駅公園口」を読みました。
男は聞くともなく電車の音を聞いていました。自分が誰かもわからなくなっていました。ただ疲れていました。人がたくさん通る所を見ていると、どこかに痛みを感じました。自分には運がないのだと実感していました。。。…続きを読む
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