今月の1位は、「本を愛する人」へ宛てた物語『その本は』(ポプラ社)
本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2022年12月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2022年12月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)
1位
書籍:『その本は』
(ヨシタケシンスケ、又吉直樹/ポプラ社)
レビュアー:Wings to flyさん 得票数:37
書評掲載日:2022-12-05 06:31:21
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/310382/review/284522/
その本は、本を愛する人へ宛てて書かれた物語なのであった。
本という「形」と、その「中身」を、たいへん楽しく鑑賞した。目が見えなくなった王様の命令を受け、又吉氏とヨシタケ氏にそっくりな二人の男がめずらしい本を探しに行く。一年間の旅を終えて戻った二人が「その本」の話を、十三の夜ごとに交替で王様に話して聞かせるという内容である。
又吉氏に似た男のパートは(ネタ的なショートストーリーも含め)小説であり、ヨシタケ氏に似た男のパートはイラスト主体の絵本である。著者おふたりが確固たる自分の世界をお持ちなので、一冊の中に二つの強烈な個性が混在しているわけだが、違和感がない。お酢とサラダ油を結び付けて滑らかなマヨネーズに仕上げる卵のように、「本」というキーワードが乳化剤となっているためであろう。…続きを読む
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2位
書籍:『ロリータ』
(ウラジーミルナボコフ、Nabokov,Vladimir、正,若島/新潮社)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:36
書評掲載日:2022-12-08 05:51:16
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/312571/review/283825/
実際に読んでみると、聞きかじりから想像していたような話ではなくて、思わずナボコフに謝りたくなった。でも、だからこそ、小説は読者によって完成されるものなのかもとも。
ナボコフの作品はこれまで何作か読んだことがあるが『ロリータ』を読むのはこれが初めて。 もちろん『ロリータ』がナボコフの代表作の一つであることは知ってはいたが、これまでどうにも食指が動かなかったのは、そのスキャンダラスな評判以上に、改めて読むまでもなく大まかなストーリーは知っていると思い込んでいたからでもあった。…続きを読む
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3位
書籍:『ドレスデン爆撃1945:空襲の惨禍から都市の再生まで』
(シンクレア・マッケイ、若林美佐知/白水社)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:35
書評掲載日:2022-12-02 13:21:51
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/312910/review/284415/
悪夢の一夜。美しい街は地獄に呑まれた。
1945年2月13日から14日にかけて。ドイツ東部の街に、爆撃機約800機が向かった。その夜、3回に分けて行われた襲撃により、古都は壊滅的な被害を受けた。ドレスデン爆撃。犠牲者は2万5千人と推定されている。…続きを読む
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4位
書籍:『おかしなあみもの』
(フィグインク、203gow、さくらいみか、たんじぇんと、ちゃみぐるみ、フウケイト、ぽぽぽ本舗、YUKO/西東社)
レビュアー:あんコさん 得票数:34
書評掲載日:2022-12-17 23:07:27
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/313299/review/285045/
まさか、まさか!!そんな物まで編めてしまうだなんて。
そんなものが編み物に!! と、驚いた編み物の本。
最初の納豆に驚き、豚バラ肉で衝撃を受け…思いも付かない物を編んじゃうなんて凄いよ!! 昔、子供の幼稚園のバザーでショートケーキやシュークリームを編んだことがあったけど…。この本に載ってるのはそんなレベルじゃない…続きを読む
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5位
書籍:『スマホになじんでおりません』
(群ようこ/文藝春秋)
レビュアー:たけぞうさん 得票数:33
書評掲載日:2022-12-09 20:37:18
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/310253/review/284566/
わたしもガラケーでいいと思っています。
わたしは携帯を持ちたくない人でした。しかし各種の連絡体制が携帯を前提に構築されていき、やむを得ずガラケーを買いました。auだったので、3Gサービスが終了となったときに今度はスマホに買い替えることになり、いまに至ります。
だからこのエッセーに同感するところが多いのです。…続きを読む
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5位
書籍:『屍介護』
(三浦晴海/KADOKAWA)
レビュアー:茜さん 得票数:33
書評掲載日:2022-12-22 15:58:38
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/313415/review/285229/
この人はもう、死んでいるのでは――? 新人介護士が経験する恐怖の介護。
表紙絵に釣られて読んでみましたが怖さよりも不気味さが先に立った。介護先は山の中にあり、ヨーロッパにありそうな領主のお屋敷といった佇まいでスマホの電波も届かない場所なので住み込みだ。
そして、茜の他に介護士は二人居て、茜を含めて三人で介護を進めて行くという説明がなされる。…続きを読む
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5位
書籍:『富岡日記 (《大人の本棚》)』
(和田英、森まゆみ/みすず書房)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:33
書評掲載日:2022-12-09 15:20:52
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/312755/review/284170/
明治の時代の女工たち青春の記録
富岡製糸場は1872年(明治5年)、フランスの技術を導入して官営模範工場として、設立された。和田(横田)英は、女工一期生たちの一人である。長野県の旧松代藩、十万石真田家に仕える藩士(十四町村の区長)横田数馬の次女である英は、当時十七歳。国策すなわち「天下のおため」にと、旧松代藩家老の娘、河原鶴と同様、率先垂範で、富岡に工女として出ることになる。(同僚には平民や新平民の女性たちも多くいた)…続きを読む
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8位
書籍:『緑の天幕』
(リュドミラ・ウリツカヤ/新潮社)
レビュアー:ぷるーとさん 得票数:32
書評掲載日:2022-12-14 07:06:28
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/303865/review/284673/
スターリンの死から、ソヴィエトの崩壊まで。この国の人々のさまざまな生きざまを描いた物語。
スターリンが危篤らしいという噂が人々の口にのぼりはじめた頃から物語は始まる。モスクワの学校に通う3人の少年が知り合いになった。彼らは、文学のシェンゲリ先生を拝し、リュルス(文学愛好家たち)というサークルを立ち上げ文学談義に熱を上げた。
ソヴィエトというと『1984年』などで象徴される全く自由のない国というイメージが強かったため、3人の少年たちを取り巻く雰囲気にはちょっと驚いたし、旧貴族階級のサーニャの家庭の雰囲気も、「思っていたのとは違う」というものだった。…続きを読む
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8位
書籍:『怪談』
(ラフカディオ・ハーン、円城塔/KADOKAWA)
レビュアー:ときのきさん 得票数:32
書評掲載日:2022-12-08 21:06:45
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/311761/review/284609/
ハーンが描き円城塔が訳す、異相のKWAIDAN
ラフカディオ・ハーンは東京帝大で英文科の教師をしていたことがある。それは知っていた。だから、当然というか、彼は日本語がある程度でき、文献も読める人だったのだ――となんとなく思っていた。『怪談』を通読したことがなくても、幾つかの有名な話はどこかで目にか耳にかしていたから、そもそも日本語で書かれたものであるかのような感覚ですらいた。
違うのだ、と意識したのは今回の円城訳を読んでからだ。…続きを読む
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10位
書籍:『クリスマス・キャロル』
(チャールズ・ディケンズ/集英社)
レビュアー:hackerさん 得票数:31
書評掲載日:2022-12-14 01:44:30
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/161263/review/284825/
誕生日がクリスマス近くだったせいで、子どものころは「クリスマスと一緒に祝いましょうね」と言われ、何の疑いもなく、それを受け入れていました。ですから、クリスマスにあまり良い思い出がないのです。
1843年刊の本書は、チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の、おそらく最も名が知られた作品でしょう。私が最初に読んだのは、世界少年少女文学全集(という名前だったと思います)に収められていた抄訳版で、中学1年の頃だったと記憶しています。それ以来ですから、完訳版を読んだのは今回が初めてでした。…続きを読む
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10位
書籍:『悪霊〈1〉』
(フョードル・ミハイロヴィチドストエフスキー/光文社)
レビュアー:星落秋風五丈原さん 得票数:31
書評掲載日:2022-12-13 05:58:40
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/71416/review/282899/
むむむ!悪霊らしきものが出てこないぞ!
他レビュアーも書いている通り実際に起きた事件が元になっているということなので、てっきり「君たち!ロシアはこのままでいいと思っているのか!」「をー!!」みたいなシュプレヒコールを期待していたが、第1巻では、らしき事件は起こっていない。元大学教授のステパン・トロフィーモヴィチ・ヴェルホヴェンスキーと裕福な未亡人ワルワーラ夫人という、くっつきそうなのにくっつかなかった二人のこじらせ恋愛が、次世代に影響する件が描かれる。…続きを読む
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10位
書籍:『最後の花束: 乃南アサ短編傑作選』
(乃南アサ/新潮社)
レビュアー:三太郎さん 得票数:31
書評掲載日:2022-12-06 07:28:49
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/232254/review/284535/
乃南さんの短編アンソロジー。テーマは「若い女の狂気」。
乃南アサさんの11篇の短編小説が納められている。1998~2015年の間に発表された作品のアンソロジーで、テーマは「若い女の狂気」だという。
「くらわんか」以外は2005年までに発表されていて、だからスマートフォンは登場せず、留守録つきの固定電話が活躍している。先頭の作品「くらわんか」は新しい作品なのでスマホが小道具になっているのだが、作品全体の雰囲気も他の作品より現代的な感じがした。この作品を紹介してみましょう。…続きを読む
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