今月の1位は、柳美里による全米図書賞受賞小説『JR上野駅公園口』(河出書房新社)
本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2021年2月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2021年2月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)
1位
書籍:『JR上野駅公園口』
(柳美里/河出書房新社)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:40
書評掲載日:2021-02-01 07:17:01
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/293601/review/256648/
本の中の物語は終わったはずではあるが、この物語はまだ生きていて、どこかに続いているかのようだ。 この先にどんな物語が綴られていくのか、もちろんそれが問題ではあるのだけれど……。
2020年の暮れ、『Tokyo Ueno Station』(柳美里:著/モーガン・ジャイルズ:訳)が、アメリカで最も権威のある文学賞の一つとされる全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞したというニュースが飛び込んできた。……続きを読む
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2位
書籍:『地下世界をめぐる冒険——闇に隠された人類史』
(ウィル・ハント、棚橋志行/亜紀書房)
レビュアー:darklyさん 得票数:37
書評掲載日:2021-02-02 19:08:19
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/292709/review/257492/
本書は単なる探検記ではない。むしろ副題の「闇に隠された人類史」の方が本書の本質を表している。
本書の題名を見ててっきりこの本は豪胆で命知らずな冒険野郎による探検記なのだろうと勝手に決めつけて読み始めると全く見当違いであり、どちらかと言いますと地下に魅せられたオタクなジャーナリストによる人間と地下の歴史を踏まえた思索的な内容がメインでした。イメージ的にはブラタモリをもっと深く、根源的なところまで掘り下げたようなものです。……続きを読む
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3位
書籍:『侍女の物語』
(マーガレットアトウッド/早川書房)
レビュアー:紅い芥子粒さん 得票数:36
書評掲載日:2021-02-01 20:39:24
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/46286/review/257459/
20世紀末から21世紀初めにかけて北米大陸に出現したギレアデ国。そこでは、女は「産める女」と「産めない女」に分類された。
1986年に発表された、近未来のディストピア小説だという。
舞台となっているのは、20世紀末から21世紀初めに北米大陸に出現した「ギレアデ」という国家である。……続きを読む
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4位
書籍:『読む時間』
(アンドレ・ケルテス/創元社)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:34
書評掲載日:2021-02-13 10:32:36
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/224902/review/258012/
あの人も、この人も、あんな時も、こんな時も。誰かが、どこかで、何かを読んでいる。
アンドレ・ケルテス(1894~1985)の写真集。
タイトル通り、さまざまな人の「読む時間(On Reading)」を収める。……続きを読む
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5位
書籍:『火喰鳥を、喰う』
(原浩/KADOKAWA)
レビュアー:休蔵さん 得票数:33
書評掲載日:2021-02-01 15:15:25
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/295013/review/256954/
「私以外私じゃないの」という歌があるが、本当にそうだろうか?そんなことを考えてしまった第40回横溝正史ミステリー&ホラー大賞<大賞>受賞作。ホラー色の強い作品。
はじまりは1冊の日記帳だった。
太平洋戦争で戦死した大叔父、久喜貞市の従軍日記。
この日記が時を越えて久喜家に戻ることになったのだ。
貞市の日記にはささやかな日常も書かれていたが、ジャングル逃亡中の苦労も多く記されていた。……続きを読む
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5位
書籍:『パディントン発4時50分』
(アガサクリスティー/早川書房)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:33
書評掲載日:2021-02-12 06:51:56
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/34438/review/257195/
マープルの分身のような彼女。
先に出発した列車を、後発した列車が追い抜いて走っていく。その間、両者が並走するわずかな時間に、こちらの列車の客室から、あちらの列車の客室で殺人が行われるのを、目撃してしまう。
劇的な幕開けだった。……続きを読む
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7位
書籍:『喪失』
(カーリンアルヴテーゲン/小学館)
レビュアー:ことなみさん 得票数:32
書評掲載日:2021-02-12 10:32:36
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/15819/review/257962/
この本を読んで「偶然の祝福」という小川洋子さんの本を思い出した。短編集だった、その中のもの哀しい「失踪者たちの王国」という一遍がこの作品のどこかに細くつながっているような気がしてならなかったが。
これは題名「喪失」からの単なる連想で読む前はこんなことだろうと思っていた。
小川さんの文芸作品とミステリの違いにちょっと気づいた。文芸作品は言葉や雰囲気が後に残るがミステリはストーリーの面白さかな、などとあとになって感じるところもあった。……続きを読む
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8位
書籍:『かの名はポンパドール』
(佐藤賢一/世界文化社)
レビュアー:DBさん 得票数:30
書評掲載日:2021-02-05 18:43:31
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/219980/review/257478/
フランスを牛耳った女の話
図書館でふと目に止まり、あの佐藤賢一がポンパドールを書いていたのかと読んでみました。
ジャンヌ・アントワネット・ポワソンと本名を言われてもフランス人?くらいにしか思えないが、ポンパドール夫人といえば今でもヘアスタイルやテーブルウェアに名前が冠せられるくらい有名だ。
フランス国王ルイ十五世の愛人であり、二十年近く宮廷を牛耳った女の一代記です。 ……続きを読む
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8位
書籍:『侍女の物語』
(マーガレットアトウッド、MargaretAtwood/新潮社)
レビュアー:efさん 得票数:30
書評掲載日:2021-02-27 04:51:04
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/245078/review/258585/
異様な世界が綴られる恐怖のディストピア小説
彼女(一応、『オブフレッド』という名前が与えられていますが、本名ではありません。これはブレッドの所有物という程度の名前なのです)は、『侍女』と呼ばれる者のようです。
いつも全身赤い服を着て、白い翼のような布で頭部、顔を隠していなければなりません。……続きを読む
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10位
書籍:『店員』
(バーナード・マラマッド/文遊社)
レビュアー:星落秋風五丈原さん 得票数:29
書評掲載日:2021-02-01 06:03:46
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/203595/review/255162/
NYのフランチェスコ アシスタントになる
イタリア・アッシジのフランチェスコは、裕福な商家の息子として、享楽的な日々を送っていた。ところがある日神への愛に目覚め、財産の総てを差し出し周囲からは奇行と受け取られる。しかしやがて彼を慕う信者が現れ、聖痕を受け、死後列聖される。 ……続きを読む
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10位
書籍:『火星年代記』
(レイブラッドベリ/早川書房)
レビュアー:四次元の王者さん 得票数:29
書評掲載日:2021-02-25 21:39:32
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/177199/review/258279/
死んだ海のほとりに最後の火星人たちが住んでいた頃、地球人がやってきた。 やがて古代文明の遺跡と火星人の精霊がさまよう地に、入植がはじまり……。
本書は雑誌に掲載された作品群をつなぎ合わせたものだが、一九九七年、八十歳近かったブラッドベリが原作を加筆修正したのがこの新版。
四十年前の原作では、火星探検隊の最初のロケットが地球を出発したのが一九九九年だったが、新版では二○三○年一月に修正された。
各章の見出しは「二〇●●年●月」というふうに西暦年月で示される。……続きを読む
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10位
書籍:『老子』
(老子/岩波書店)
レビュアー:風竜胆さん 得票数:29
書評掲載日:2021-02-20 10:05:29
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/63636/review/258305/
孔子より老子がいい!
道教の始祖と呼ばれる老子。本書は、その老子が書き、一般に「老子」と呼ばれているが、正式名「老子道徳経」の全文を紹介したものである。全部で81章からなり、各章の翻訳文、漢文の読み下し文、原文、注釈という形になっている。だから書かれていることに対する講義のようなものはない。そこは自分で考えろということだろう。……続きを読む
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10位
書籍:『マダム・エドワルダ/目玉の話』
(バタイユ/光文社)
レビュアー:ゆうちゃんさん 得票数:29
書評掲載日:2021-02-16 17:28:29
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/10663/review/257369/
マダム・エドワルダは「私」が有名な娼婦を買う話。「目玉の話」は、「私」の過去の回想。別荘地で出会った従妹と性倒錯にふけるのだが・・。著者の代表作らしいが、過激な話で当然好みが分かれる作品である。
自分にはあまりなじみのない作家だが本書で取り上げられる「マダム・エドワルダ」と「目玉の話」は、バタイユの代表作だそうだ。
「マダム・エドワルダ」は現在時制で語られる話で、「私」が「鏡の間」という娼館に行きそこの有名な娼婦「マダム・エドワルダ」と抱き合い、そのままふたりで外出し、サン=ドニ門の付近でもまた抱き合う。そしてタクシーに乗り、今度はタクシーの運転手も巻き込んで・・・。 ……続きを読む
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