今月の1位は、あの名作誕生の舞台裏を描く『ハムネット』(新潮社)
本好きが集い、書評を投稿する読書コミュニティ「本が好き!」の 2022年2月の月間人気書評ランキングを発表します。 (同じレビュアーさんが違う書評でランクインしていた場合はより上位の書評のみを掲載しています。つまり2022年2月で、投票数が上位だった10人の書評が掲載されています)
1位
書籍:『ハムネット』
(マギー・オファーレル/新潮社)
レビュアー:かもめ通信さん 得票数:38
書評掲載日:2022-02-07 06:05:14
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/303222/review/272000/
大胆ながら繊細で、陰翳すらも鮮明で、この作家とこの翻訳家でしかありえないと思われるほど、見事に紡がれた物語。この魅力を上手く伝えるレビューは書けそうにない。
“シェイクスピアは18歳のときに8歳年上の女性と結婚し、半年後に長女が誕生した。その翌々年には男女の双子が生まれ、ハムネットとジュディスと名付けられた。ハムネットは11歳のときに死んだ。”という記録は残っている。
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2位
書籍:『破壊された男』
(アルフレッド・ベスター/早川書房)
レビュアー:darklyさん 得票数:34
書評掲載日:2022-02-08 20:55:50
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/249397/review/272300/
エスパー捜査官による近未来警察小説と言えるが、張り巡らされた伏線により物語は想像できない結末に至る。
人の心を読み取ることができるエスパーと普通の人が混在する世界。エスパー捜査の抑止力により殺人が久しく行われなかった中、モナーク産業の社長ベン・ライクは殺人を計画する。標的はクレイ・ドコートニイ。ドコートニイ・カルテルの社長であり、その会社によって窮地に追い込まれたライクが、窮余の策として持ち掛けたモナーク産業とドコートニイ・カルテルの合併をドコートニイが拒否したためだ。ライクはエスパー捜査官を躱すための策略を練り殺人を実行する。殺人を計画し始めた時からライクは「顔のない男」の悪夢にうなされるようになる。
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3位
書籍:『沙林 偽りの王国』
(帚木蓬生/新潮社)
レビュアー:ぽんきちさん 得票数:31
書評掲載日:2022-02-23 14:43:54
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/305311/review/272911/
オウム真理教とは何だったのか
1990年代の半ば、1つの宗教団体が日本を震撼させた。
オウム真理教。
ヨガ教室からはじまったその新興宗教は、オカルトブームにも乗る形で信者を増やしていった。過激な修行や教祖・麻原彰晃への絶対的な帰依が特徴。組織が大きくなるにつれ、強引な布施や出家の強要から、信徒やその家族とのトラブルが増えていく。拠点の近所とのもめ事も絶えなかった。
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3位
書籍:『非色 (河出文庫)【Kindle】』
(有吉佐和子/河出書房新社)
レビュアー:紅い芥子粒さん 得票数:31
書評掲載日:2022-02-05 09:50:55
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/304765/review/272162/
この小説が発表されたのは1964年。少しも古さを感じない。差別したり、差別されたり。わたしたちは、いまも苦しんでいる。おそらく人が人である限り、この苦しみは続く。
戦後、「戦争花嫁」とよばれた多くの日本人女性がいた。
進駐軍の兵士と結婚して、アメリカに渡った人たちである。
笑子は、そんな「戦争花嫁」のひとりだった。
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4位
書籍:『カブトガニの謎: 2億年前から形を変えず生き続けたわけ』
(惣路紀通/誠文堂新光社)
レビュアー:休蔵さん 得票数:30
書評掲載日:2022-02-07 07:15:50
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/304792/review/272039/
“生きた化石”カブトガニの謎を解説してくれる児童書。カブトガニについて詳しくなることが、生活に直結しないと思ったが、人間も自然界の一員、どんな生き物の生態も少なからず関係するものです。
世の中に“生きた化石”は数多く存在する。
シーラカンスは代表選手だし、オオサンショウウオもそうらしい。
本書が取り上げるカブトガニもまた生きた化石で、恐竜の時代までさかのぼるそうだ。
ご先祖はかの有名な三葉虫かもしれないという。
そして、現在と同じ姿になったのは、なんと2億年前。
そんなカブトガニが国内に生息している。
しかも、生息地を国の天然記念物に指定して、しっかりと保護している場所があるそうだ。
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5位
書籍:『ノースライト』
(横山秀夫/新潮社)
レビュアー:はなとゆめ+猫の本棚さん 得票数:28
書評掲載日:2022-02-04 06:41:49
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/275016/review/272119/
小学生のころ、道路建設や発電所建設で全国を得当たり歩く労働者家族の集団があった。
私が小学生の時、最初の東京オリンピックがあった。当時は、舗装道路は殆どみられなかった。20km離れた、少し大きな市の商店街まで行かないと舗装道路はなかった。私の家の前は国道20号線。ここを聖火が通るということで、舗装にすることになった。道幅が狭いので、舗装の前に、道幅を広げねばならなかった。それには道沿いにある家を切断するかジャッキであげ、後ろにズラせねばならない、合わせて電信柱もずらせねばならない。
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5位
書籍:『星を継ぐもの』
(ジェイムズ・P・ホーガン/東京創元社)
レビュアー:ぱせりさん 得票数:28
書評掲載日:2022-02-18 05:28:49
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/10751/review/272231/
その「死体」に導かれて……。
時は2020年代後半。
月面には、国連宇宙軍(UNSA)による研究施設もできているし、地球との間に宇宙船が行き来して、探査や研究がどんどん進んでいる。そういう時代になっている。
この作品が発表されたのが1977年なので、約50年後の未来ということになる。
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5位
書籍:『どくとるマンボウ青春記』
(北杜夫/新潮社)
レビュアー:三太郎さん 得票数:28
書評掲載日:2022-02-17 14:59:03
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/38824/review/272596/
作家・北杜夫がたどった旧制高校から大学卒業までの、疾風怒濤の青春期。ちょっと躁うつ病が始まっているかのような、ところどころ変調気味の半生記です。
北杜夫の船乗りクプクプの冒険を久しぶりに再読したら北の本がもっと読みたくなった。
この青春記は東京で旧制の中学生だった頃から始まって、旧制高校時代から大学の医学部時代までの北の青春時代の思い出が綴られている。書いたのが40歳の頃だからもう青春の思い出といってよいのだろう。
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8位
書籍:『わたしのバイソン』
(ガヤ・ヴィズニウスキ、清岡秀哉/偕成社)
レビュアー:hackerさん 得票数:27
書評掲載日:2022-02-26 16:31:43
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/302761/review/273020/
美しいものを、それを直接知らない人に、言葉で説明するのは難しいものです。この絵本もそうです。
ぱせりさんの書評で、この本のことを知りました。感謝いたします。
美しい映画というと、私がまず思い出すのはビクトル・エリセ監督の『エル・スール』(1982年)になります。もっとたくさんあっても良いのかもしれませんが、映画の場合、とくに長編映画がそうなのですが、映画の初めから最後まで美しいというのは、ほとんどないのです。
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8位
書籍:『貧しき人々』
(ドストエフスキー、安岡治子/光文社)
レビュアー:いけぴんさん 得票数:27
書評掲載日:2022-02-06 16:15:05
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/288494/review/272228/
貧しくて、哀れな人々の往復書簡
1846年ドストエフスキーが25歳の時に発表した処女作。「貧しき」という形容詞は英語で言うところのpoorであり、他に「哀れな、可哀相な」という意味も持つ。主人公の一人マカールをみると「貧しき」でもあり「哀れな」という形容がぴったりとくる。
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10位
書籍:『孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか』
(柳沢高志/文藝春秋)
レビュアー:そうきゅうどうさん 得票数:26
書評掲載日:2022-02-13 13:54:28
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/303687/review/272496/
これは単純な“内幕暴露本”ではない。だからこそ、こういう本を読む時は「何が書かれているか」という以上に「何が書かれていないか」に注意する必要がある。
この本が出版され、その内容を知った元首相・菅義偉は「ルール違反だ!」と叫んで激怒した──という話がまことしやかに伝わっている(本当かどうかは知らんが)。その理由は、この『孤独の宰相 菅義偉とは何者だったのか』の著者で日本テレビの記者、柳沢高志が、官房長官時代から菅の番記者として菅の懐深くに入り込み、その言動を間近で見てきた人物だったからだ。そしてこの本には、柳沢とのプライベートなやり取りを含めた、本来外に出るはずのない菅の言葉が明らかにされている。
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10位
書籍:『地中の星』
(門井慶喜/新潮社)
レビュアー:morimoriさん 得票数:26
書評掲載日:2022-02-04 16:05:47
書評URL:http://www.honzuki.jp/book/302896/review/272068/
日本で一番早く開通した地下鉄銀座線。多くの男たちの物語が地中に眠っている。
大学卒業後、南満州鉄道に就職した徳次は、中央官庁のひとつ鉄道員に席をうつしたが役人勤めが性に合わず、栃木県佐野鉄道、大阪府高野登山鉄道の再建に尽くした。東武鉄道や南海鉄道の経営陣に名を連ねていたかもしれなかった徳次だが、「何かしらこの世で最初の仕事がしたい」という大望を持ち続け、ロンドンへ行った。ロンドンで、徳次が「賭けるに値する」と目をつけたのが、誰もがあたりまえのように利用していた地下鉄道だった。
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